「夜に横になっても、心配事が頭を巡り、なかなか眠れない経験はありませんか?」
「仕事が忙しい時期は寝ても寝ても目が覚めてしまったり、寝た気がしない経験はありませんか?」
このような状況は、ストレスが原因で起こる不眠の典型的な例です。不眠は単なる夜の悩みではなく、私たちの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
- ストレスと不眠について
- 不眠の種類
- 不眠の種類別対策
について解説します。
ストレスと不眠の関係
不眠とは
不眠は誰にでも起こりうる病気であり、成人の 30〜60%は何らかの不眠症の症状を報告しており、約 10 〜 15 %が日中に影響を伴う慢性的な不眠症を患っています(1)
(1)Maurice M Ohayon. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev. 2002 Apr;6(2):97-111.
不眠の原因
不眠にはさまざまな原因があります。
- ストレスなどの精神的
- 頻尿
- 薬の影響
- アルコール
- 痛み
- むずむず足症候群
- 基礎疾患
薬を処方する前に一度不眠の原因について追究する必要があります。
ストレスと不眠
今回は代表的なストレスについて説明していきます。
ストレスがあることにより、寝つきに影響したり、途中で起きてしまったり、熟睡した感じがしない方はたくさんいます。
現代はストレス社会なので睡眠とストレスは切っても切り離せない関係です。
慢性不眠症患者の約半数は精神疾患を合併していて、精神疾患を持つ患者の大多数は不眠症を合併しているという報告もあります。(1)
不眠の種類
不眠症には、
- 入眠困難(寝付けない)
- 中途覚醒(何度も起きてしまう)
- 早朝覚醒(朝早く起きてしまう)
- 熟眠障害(寝ても寝た気がしない)
の4つのタイプがあります。
それぞれのタイプには特徴があり、
適切な対処法が異なります。
以下で説明していきます。
1:入眠困難
不眠の代表的なタイプです。寝ようとしても寝れない状態です。
一度眠れると朝まで寝れます。
ストレスにより、寝る時に色々考えてしまったり、
不安がつのってきて寝れないパターンががあります。
また、ストレス以外にも原因が多く、
日常生活で悪い習慣を作ることによって増悪していきます。
体質的に寝つきが悪い人もいます。
若い頃から寝付きにくい体質であれば睡眠導入剤に頼るだけでなく、生活の改善が必要です。
具体的な対策は後述します。
2:中途覚醒
これは途中で何度も起きてしまうパターンです。
ストレスにより、交感神経が昂っているので、眠りが浅くなり、起きてしまうパターンです。
その他、代表的な原因として頻尿があります。
前立腺肥大の影響や過活動膀胱などによる影響です。
患者様は「目が覚めてしまうからトイレに行っているだけ」という方もいますが、トイレに行きたいから眠りが浅くなっている場合があります。
3:早朝覚醒
朝早く起きてしまうパターンです。ストレスにより、交感神経が昂っていると、生じます。
4:熟眠障害
寝ても寝ても寝た気がしない状態です。
ストレスにより睡眠の質が落ちている状態です。
またその他原因として
・アルコール
・睡眠時無呼吸症候群
などがあります。
不眠の種類別対策
「睡眠薬は飲みたいけど怖いなー」というイメージはありませんか?
確かに睡眠薬には副作用があります。それをよく知った上で使うことがオススメです。
また、寝れない原因がストレスであるならばストレスを改善しなければ、だんだんと効果無くなっていくこともあります。
ストレスが強くて眠れない場合には
- 認知行動療法
- 漢方
がオススメです。
今回はストレスとの関係なので、認知行動療法、漢方薬を中心に解説します!
大事なのは
「睡眠をとりやすい生活習慣、環境づくり」、「認知行動療法」⇒「薬を飲む」
の順番が大切なので、まずは睡眠をとりやすい生活習慣を解説します。
生活習慣
- 日光を浴びる
- 昼寝を避ける
- 運動:1回30〜40分を週4回位
- カフェイン、ニコチン、アルコールは就寝前は避ける
- 運動も就寝前は避ける
※運動は就寝3〜4時間前まで
- 就寝前の大食も避ける
※牛乳やさくらんぼが入眠に効果的、脂っこいもの・バター・チーズ・赤み肉・食物繊維なども取りすぎは入眠の邪魔
環境づくり
- テレビ、携帯電話、パソコンは寝る30分前からやめる
- 部屋は静かに暗くする
- 就寝時間、起床時間を一定に
- 20分以上起きた状態でベットにいない
- 8時間以上寝ない
- 就寝30分前はルーチン動作をする
認知行動療法
認知行動療法についてはこちらのページで
詳しく解説していますので、参考にしてください。
薬物療法
薬物療法には西洋薬と漢方薬があります。
西洋薬は即効性があります。
漢方薬は即効性があるものもありますが時間をかけて効いていくイメージです。
どちらの薬にも副作用はありますが、西洋薬には最大の欠点として依存性があります。
これは、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系と言われ、昔から使われている主流の薬です。
上手く使えば問題ないですが、使い方を誤ると後々大変になってきます。
(西洋薬の中にも依存しないタイプもでてきています。)
ではタイプ別に薬物対策をせつめいします。
入眠困難(寝付けない)
〇睡眠薬(睡眠導入剤)
睡眠を促す薬になります。
効果は強く、即効性があります。
欠点として
・依存性
・転倒しやすい(特に高齢者)
があります。
どうしても必要な場合は使いますが、安易に量を増やしていくのはおすすめしません。
また、長期に高容量を使うと、やめようとしても反動でどんどん悪化することになります。
注意しましょう。
〇漢方薬
・抑肝酸(よくかんさん)
ストレスで緊張が張り詰めている人に有効です。この漢方薬でリラックスさせます。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
寝る時にその日の出来事を考えてしまったり、浮かんできて寝れない時に使います。
イメージとしては疲れているけど、なぜか眠れない人に向いています。
中途覚醒(何度も起きてしまう)
〇睡眠薬(中間作用型)
睡眠薬の長く効くバージョンです。
寝付くのはいいけど、起きてしまう場合に使います。
前述したその他の疾患もしっかり鑑別しましょう。
薬は長時間効くために、日中眠気が残る可能性があるので注意しましょう。
〇漢方薬
・加味帰脾湯(かみきひとう)
ストレスの影響で眠りが浅い場合が多いので、ストレス緩和、リラックス効果を狙います。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
先ほども紹介した漢方です。
中途覚醒タイプにも有効です。
早朝覚醒(朝早く起きてしまう)
基本的には入眠困難タイプと同じ治療方針です。
最初の寝つきは問題ないが、一旦起きると寝れない場合はこのタイミングで導入剤を内服して寝る場合もあります。
熟眠障害(寝ても寝た気がしない)
まずはアルコールの確認です。
アルコールは寝つきはよくしますが、熟眠効果は低下します。
特に寝れないからアルコールを飲んでいる方は要注意です。
次に睡眠時無呼吸症候群の確認をしましょう。
「いびきをかく」ことが有名です。
検査を受けましょう。この場合は睡眠の質が悪いので、どんなに寝ても眠気が取れることはありません。
また、運転される人は事故につながりますので、ぜひ検査を受けましょう!
〇睡眠薬
熟眠障害の場合は「オレキシン受容体拮抗薬」や「メラトニン受容体アゴニスト」などのベンゾ系とは違う薬を使います。
〇漢方薬
・加味帰脾湯(かみきひとう)
前述した薬です。熟眠効果もります。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
前述した薬です。熟眠効果もあります。
・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
以前にも紹介した漢方です。主に不安が強い人に使います。
不安が強く心が休まらないので、眠りも浅い状態が続き、熟眠感がなくなります。
まとめ
ストレスと不眠は密接に関連しています。
日々のストレス管理と睡眠の質を向上させることで、健康的な生活を送ることができます。
今回の記事を読んでいただき、自分の不眠タイプを理解いただき、対策を検討いただけると幸いです。
ストレスを自覚してから眠れない方はぜひ参考にしていただければ幸いです。
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