最近ニュースでこの話を耳にしませんか?
2024年、日本での劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の報告数が急増しています。この感染症は、一般に「人食いバクテリア」とも呼ばれ、その名の通り非常に危険な病気です。
実際に病院にも心配という人が受診されます。
今回の記事ではSTSSについて正しい知識を手に入れて、早期発見、予防的対策を身につけましょう。
まずは、この病気の背景と現状について詳しく説明します。
目次
イントロダクション
〇背景
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる重症感染症です。
A群溶血性レンサ球菌自体は、よくいる扁桃腺炎などの原因になる溶連菌と呼ばれるものです。
稀にその一部に強い奴がいて、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を引き起こします。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の症例は10万人あたり3.5件と推定されます。
致死率は30〜60%と言われます。
〇現状
2019年以降、劇症型溶血性レンサ球菌は緩やかに減っていましたが、2023年から増加し始めております。
そして、2024年になって急速に増加しており、
6月の時点で前年を超えております。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年6月時点 |
894人 | 718人 | 622人 | 708人 | 941 | 977人 |
参考: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
〇増加の原因
STSSの増加はハッキリと解明されていません。
複数の要因が考えられますが、その一つに、COVID19対策として、マスク生活を行ったことにより、感染頻度が減り、免疫獲得するチャンスが少なく、免疫に変化が起きた可能性があります。
そのため、マスク着用を減らした途端に感染が多くなり、その一つとして溶連菌感染が増えたことによる影響が考えられます。
〇予防と対策
まずは一般的な感染対策が重要です。
手洗いやマスク着用、傷口を清潔に保つことが重要です。
また、体調が悪ければ速やかに医療機関を受診しましょう。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは何か?
ここからはより詳しく、STSSの基本情報と致命的な理由について科学的観点から詳しく説明します。
〇劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の基本情報
A群溶血性レンサ球菌はよくいる菌です。
人間の体には様々な菌が普段から住み着いています。例えば便の中には大腸菌などいますよね。
STSSは通常は無菌の部位(血液、胸膜液、心膜液、関節液、脳脊髄液など)にレンサ球菌が感染することで起きます。
STSSには
・妊娠関連感染症
・壊死性軟部組織感染症(足の感染)
・菌血症
・呼吸器感染
などがあります。
〇なぜSTSSは致命的なのか
STSSは感染症のなかでも急激に進行して、敗血症性ショックを起こします。
敗血症性ショックとは菌が全身にまわり、暴れまわっている状態です。そのため、色々な臓器にダメージがでる状態で、深刻な状態です。いわゆる集中治療室などで治療するような状態です。
通常細菌感染に対して、抗生物質を打ち込み菌を退治しますが、効くまでに数日かかります。
しかし、STSSは感染の勢いが強いため、効く数日の間に進行してしまうケースが多いため、致命的となります。
下肢に感染した場合は壊死性筋膜炎と呼ばれる病気を引き起こします。
急速に足が腐っていきます。
感染を止めるために下肢を切断しなくてはいけないケースもあります。
外来で診察を待っている間、検査をしている間に急速に進行するケースなどもあります。
昨日まで元気だったけど、急に命の危険に晒されます。
なぜ2024年に急増したのか?
2024年に日本で劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の報告数が急増した理由には、いくつかの要因が考えられます。以下に、その可能性のある原因を詳しく探求します。
〇2024年におけるSTSSの報告数の増加
先ほども紹介したように、2024年に入り、急激に感染数が伸び、6月の時点で前年度を上回っています。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年6月時点 |
894人 | 718人 | 622人 | 708人 | 941 | 977人 |
参考: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
〇増加の可能性のある原因
STSSの増加には複数の要因が考えられますが、以下の点が特に注目されています。
・COVID19の関連
COVID19対策として、マスク生活を行ったことにより、感染頻度が減り、免疫獲得するチャンスが少なく、免疫に変化が起きた可能性があります。
そのため、マスク着用を減らした途端に感染が多くなり、様々な感染症が流行しています。
・溶連菌咽頭炎の増加
こちらもコロナの影響か、A群溶血性レンサ球菌による咽頭炎が過去10年間で最大規模となっております。そのため、溶連菌の流行に伴い、稀に起こるSTSSも増加していると考えられます。
溶連菌感染が増えた原因は明らかではないです。
個人的にはこちらもCOVID19の影響で、子供たちがCOVID19対策でマスクや手洗いを徹底することによる感染頻度が減ったためと考えています。
・外国人の影響
コロナが明け、日本にも多くの外国人が訪れるようになりました。
その影響も可能性として挙げられます。
2022年後半〜2023年にヨーロッパでSTSSが流行していました。その辺の病原菌が日本に上陸している可能性もあります。
予防と対策
ここまでの話で、いかに劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)が怖い病気かわかったと思います。
治療は病院に任せるしかありませんが、大事なことは予防と早期発見です。
以下に、予防方法と早期発見のためのサインについて具体的に説明します。
〇予防方法
- 手洗いと手指消毒: 定期的な手洗いとアルコールベースの手指消毒剤の使用は、細菌の伝播を防ぐ基本的な方法です。しっかりと洗い残しが無いように洗いましょう。以下の画像を参考にしてください。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf
- 傷口の管理: 傷口は清潔に保ち、適切にカバーすることで感染リスクを減らします。特にご高齢の方や糖尿病の患者さんは痛みに鈍感になっていることが多いです。足に傷がないか日々チェックしましょう。大きな傷たげてなく、乾燥で傷ができている場合や痒くて掻きむしって傷となっている場合もあります。注意して観察しましょう。
- 公共の水場の利用制限: 傷や皮膚感染症がある場合は、温泉、プール、川や海などの公共の水場の利用を避けることが推奨されます。
- マスクの着用: 飛沫感染を防ぐために、人混みの中ではマスクを着用することが有効です。
〇早期発見のためのサイン
- 急速に広がる皮膚の赤みや熱感・腫れ:
これらは感染が広がっている可能性があるため、注意が必要です。
赤みや腫れ以上に痛みの部位が広がっている場合は注意が必要です。
また、肝臓が悪い人や糖尿病の人は特に注意が必要なので早めに受診しましょう。
- 意識の変化:
普段と比べて様子がおかしい、または意識がはっきりしない場合は、緊急を要します。
これらのサインが見られた場合は、内科や皮膚科、または夜間や休日であれば救急科を受診するなど、速やかに医療機関へ行くことが重要です。
高齢の方では熱が出ないことも稀ではありません。普段と様子がおかしい、呼吸が早い場合は要注意です。
専門家の見解
このまま増加していく可能性もあるので、注意が必要です。
基本的には予防、早期発見、早期対応が重要です。
先ほど紹介した予防対策をしっかり行いましょう。
また以下に紹介するリスクの高い人は特に注意しましょう。
- 血腫、打撲、筋肉の緊張につながる外傷を含む軽度の外傷
- 最近の手術
- HIV感染
- 静脈内薬物使用
- 栄養状態が悪い人
- 産後の人
- 肥満
- 癌に罹患している人
- 免疫抑制治療をしている人
- 糖尿病
- 心臓病
最後に
いかがだったでしょうか。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は大変危険な感染症です。
リスクのある人は特に注意しましょう。
予防と早期発見が重要ですので、紹介した情報を有意義に使っていただき、行動に移していきましょう。
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