私たちの日常生活において、味を感じることは楽しみの1つであり、生活の質を大きく左右します。しかし、この重要な感覚が突然変わったり、失われたりすることがあります。それが味覚障害です。あなたは食事の味が「いつもと違う」と感じたことはありませんか?それは単なる一時的な変化ではなく、健康上の警告信号かもしれません。
今回の記事を読んで、味覚障害を理解し、適切に医師に相談しましょう。
目次
味覚障害の基本
味覚障害は、味を感じる能力が低下したり、変わったりする状態を指します。
・特定の味覚を感じにくい
・特定の味覚を感じない
・特定の味が変になる(甘みを食べると辛味がするなど)
・特定の味を食べると不快な感じがする
日本では、多くの人がこの症状を経験していますが、その多くが自覚症状に気づかずに過ごしています。
原因と対策
味覚障害の原因は多岐にわたります。加齢やストレス、栄養不足、病気など、生活習慣や健康状態が大きく関わっています。
原因として、口腔疾患が26%、特発性味覚障害が27%、心因性味覚障害が25%と全体の70〜80%程度を占めるという報告もあります。
(山崎裕ほか. 口科誌. 2013, 62(4), p.247-253.)
以下に代表的なものを紹介します。
嗅覚異常
まず確認します!
嗅覚の異常により味覚に影響が出る場合があります。
まずは匂いを感じられるか確認しましょう。
原因としては、「脳」「鼻」「感染」などがあります。
中枢障害
次に脳の問題か、確認します。
片則の味覚異常がある場合は脳卒中や脳腫瘍などの影響を疑います。
口腔障害
口の中の問題もあります。
歯肉炎や虫歯やカンジダ症(カビによる感染)が原因となります。
また、唾液が少なくて異常が起きる場合をシェーグレン症候群といいます。
それに伴い口腔内に異常がおき、味覚障害につながります。
「唾液が少ない」の目安はパンのようなパサつくものが飲み物がないと食べれない場合です。
このような症状を認めれば病院で検査しましょう。
全身疾患
腎臓、肝臓、糖尿病、甲状腺疾患などにより認める場合があります。
まずは内科に受診して、異常がないか確認しましょう。
亜鉛欠乏症
味覚障害で有名なのが亜鉛欠乏症です。
亜鉛は様々な原因で不足します。
主な原因として
・摂取不足
亜鉛の摂取推奨量は1日8〜11mgとなっています。
日本人の平均摂取量は男性で9.2mg、女性で7.7mgと報告されています。
https://hfnet.nibiohn.go.jp/mineral/detail672/#:~:text=亜鉛摂取状況,しています%20(2)%20%E3%80%82
・吸収不良
慢性肝疾患、炎症性腸疾患などが代表的です。
・排泄増加
糖尿病、腎臓病、透析患者、溶血性貧血などでおきます。
・薬剤性
薬でも亜鉛不足となります。
高血圧、リウマチ、糖尿病、抗甲状腺薬などで起きます。かかりつけ医と相談しましょう。
検査
血液検査で行います。亜鉛が70μg/dl未満で欠乏症となります。
治療
薬で亜鉛を補充します。長期服用でアミラーゼ(膵臓の酵素)の上昇や体内の銅が不足する場合があるので、定期的に血液検査を行いましょう。
食事で摂取量を増やすには牡蠣やレバーが有効です。
ビタミン不足
ビタミンB12が不足することで舌に炎症が起きて味覚障害が生じます。
主な原因として
・ピロリ菌の感染
ピロリ菌が感染して、萎縮性胃炎という胃炎を起こすと生じます。胃カメラで診断します。
・薬剤性
胃薬や糖尿病薬で生じます。
・膠原病
自己免疫性疾患と呼ばれるもので、リウマチなどが膠原病と呼ばれます。
口が渇くシェーグレン症候群や皮膚が硬くなる強皮症と呼ばれる病気で起こります。
・アルコール
アルコールを大量に摂取する事で欠乏してしまいます。
・胃切除後
胃を摘出していたり、残存が少ない場合、ビタミンを吸収する働きがなくなってしまい、不足する場合があります。
胃の手術をしたことある方は定期的にビタミンの検査をしましょう。
・加齢
年齢に伴い不足する場合があります。
治療
飲み薬や点滴による補充をします。
鉄分不足
鉄分不足による貧血で舌に炎症が起きる事で味覚障害となります。
原因
・女性の場合は生理に伴う出血が多いです。
・男性や閉経後の女性では胃がん、大腸がんなどの出血を起こす病気が原因とります。胃カメラや大腸カメラをしましょう。
治療
鉄分を補充します。主に飲み薬になりますが、どうしても薬が飲めない人は点滴による補充もあります。
新型コロナウイルスと味覚障害
新型コロナウイルス感染により嗅覚障害、味覚障害が報告されています。
通常のウイルス感染でも一定の割合で嗅覚異常をきたし、そのため味覚異常を併発しています。
新型コロナウイルスの場合は味覚障害単独でも起きます。
基本的には自然治癒する場合が多いです。
感染後1ヶ月で嗅覚障害は74%、味覚障害は78%の人が回復
感染後3ヶ月で嗅覚障害は96%、味覚障害は98%で回復
このような報告もあります。
(Benjamin Kye Jyn Tan et al. Prognosis and persistence of smell and taste dysfunction in patients with covid-19: meta-analysis with parametric cure modelling of recovery curves. BMJ. 2022.)
特発性・心因性味覚障害
こちらは明らかな原因がない場合です。
抗不安薬や漢方薬による治療となります。
まず抗不安薬を試すケースが多いです。少量から開始して、眠気が問題なければ継続していきます。
抗不安薬が向こうの場合、漢方薬に切り替え、もしくは併用していきます。
漢方薬は病態に合わせて治療が変わりますのでまず相談してみましょう。
最後に
味覚障害は、私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。この記事を通じて、味覚障害についての理解を深め、自分自身や大切な人の健康に気を配るきっかけにしていただければ幸いです。もし味覚に変化を感じたら、それは体からのサインかもしれません。適切な対応をとることで、生活の質を守り、楽しみを取り戻すことができます。
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