「便秘でこんなにお腹痛くなるのか?」「いつもの便秘の痛みとは違う」こんな症状を感じたことありませんか?
便秘は日常の診療でよくみる疾患です。よくある疾患ですが、場合によっては激痛となる場合もあります。また、便秘と思って放置していたら実はとんでもない病気という場合があります。そのため、鑑別疾患、対処法を正しく学びましょう。
今回の記事では
- 便秘とは
- 本当に便秘でいいの?腹痛の原因疾患
- 便秘の対処法
について解説します。
この記事をきっかけに便秘について理解を深め、上手く対処していきましょう。
目次
便秘とは
便秘は、排便が困難で、通常よりも少ない回数で便を排出する状態です。便秘は多くの人に影響を与え、日常生活に不快感をもたらすことがあります。
便秘のメカニズム
腸内の便が適切に排出されないと、腸内でガスが溜まります。これにより腹部が膨張し、腹痛を引き起こすことがあります。
また、便秘によって腸内の腐敗物質が増加し、炎症を引き起こすこともあります。
便秘の種類
便秘はさまざまなタイプがあり、それぞれ異なる対処法が必要です。以下に便秘の種類と対処法を紹介します。
痙攣性便秘
内容物を先に送ろうとする腸の不規則な運動が強すきるため、便をうまく運べない状態です。
ストレスなどで大腸が痙攣を起こし、大腸がくびれて狭くなるため起きます。
若い人に多く、便秘と下痢を繰り返します。
弛緩性便秘
大腸や周辺の筋力が低下し、腸の動きが弱くなって起こるタイプの便秘です。加齢に伴って起こりやすいため、高齢者に特に多く見られます。
直腸性便秘
出口部分に問題があり、出口付近で溜まり、上手く出せないタイプの便秘です。強い残便感があります。腹筋の衰えた高齢者に多いです。
器質性便秘
癌などがあって、通り道が狭くなっているために起こる便秘です。
薬剤性
薬の副作用で起こる便秘です。
便秘による腹痛
便秘は腹痛の原因となります。腸内の便が滞留することで、腹部が膨張し、不快感や痛みを引き起こすことがあります。
痛みには波があります。
腸は1日中動いているわけではないので、痛みが落ち着く時間帯もあります。
いつもより痛みが違う、こんなに痛いのは初めてという場合は危険なサインです。
必ず病院を受診しましょう。
本当に便秘でいいの?腹痛の原因疾患
腹痛は様々な原因で起こります。
ここでは病院を受診すべき症状と代表的な疾患を紹介します。
緊急性のある腹痛
まずは緊急性の高い疾患を3つ紹介します。
盲腸
医療用語では虫垂炎(ちゅうすいえん)といいます。疾患数が多く、日常診療で多く遭遇します。
治療が遅れると盲腸が破裂したりするので、注意が必要です。
典型的にはみぞおちが痛くなり、その後気持ち悪くなります。次第に痛みが移動して右下が痛くなります。
ただ、盲腸は有名な割には初期に診断するのは難しいです。
なぜなら典型的な症状でない場合が多いです。
そなため、お腹が痛い時は診断がハッキリするまで、盲腸は否定しない事が大事です。
少なくとも右下が痛くなった場合は検査をする必要があります。
治療は点滴加療と手術と状態に合わせて決めます。
腸閉塞
腸が完全に詰まってしまう状態です。痛みは気づいたら出現して、だんだんと強くなります。
痛みは波があるので、一旦落ち着く事がありますが、そのあと再び増悪するので、注意が必要です。
詰まる原因としては様々あります。
治療は手術が必要となるケースが多いです。
消化管穿孔
腸に穴が空く事です。
痛みは突然起きます。痛みがでた瞬間を明確に覚えていることがおおいです。
腹の表面まで痛みが波及するので、うずくまってしまうほどの痛みです。
治療は手術が必要となるケースが多いです。
慢性的な腹痛の原因疾患
痛くなっては良くなってを繰り返す疾患について紹介します。
良くなるからといって放置すると危険な場合があります。ここでは代表的な3つの疾患を紹介します。
大腸がん
便秘の人で除外したいのはこの疾患です。
排便コントロールなどで、疼痛が改善したとしても放置するとどんどん進行していきますので、必ず除外しましょう。
最も効果的なのは大腸カメラです。
大変なので、まずスクリーニング検査をするのであれば大腸がん検診をしましょう。
潰瘍性大腸炎、クローン病
慢性的な腹痛では必ず除外したい病気です。
腸管に炎症を起こす病気です。
若い方に多く、定期的に腹痛、発熱、下痢、血便などを認めます。
診断は大腸カメラになるので、一度は検査を受けましょう。
過敏性腸症候群
慢性的な腹痛で多い疾患です。
タイプによって、嘔吐・腹痛・下痢と症状を認めます。
大腸自体には炎症がなく、食生活・ストレス・体質的に痛みを出します。
大腸カメラで異常を認めないのが特徴です。心配な方はぜひ相談しましょう。
便秘の対応
基本的に「食生活」「運動」「薬」です。
食生活
一般的に食物繊維とよく言われますが、取ればいいわけではありません。
接種の仕方を間違えると悪化させる場合があります。
ここでは正しい食事療法について説明します。
便秘の予防
予防には食物繊維が重要です。
食物繊維とは消化しにくく、腸の中に水分を引っ張ってくる効果があります。そのため便を出しやすくします。
1日の食物繊維の目安として20g前後の摂取が推奨されています。
日本人の食事摂取基準 2020年版 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会 第一出版,2020
便秘時
便秘時とは、お通じが出づらくなってきたり、少しお腹が張ってきたり、痛みが出始めた時です。
この時に食物繊維をたくさんとるのは逆効果です。
食物繊維は消化しにくいため、便秘が悪化してきた場合はすでに腸の中が渋滞しています。この時にさらに消化しにくいものが沢山入ってくると余計に腸の中が渋滞します。
そのため、症状が出始めた時は逆に消化に良いものを取りましょう。
一般的に水分を多く取り、消化しやすい糖質をたくさんとります。(ご飯とかうどんとか)
りんご、もも、なし、さくらんぼ、レーズン、ぶどう、ナッツなども効果的です。
運動
運動不足になると腸の活動が低下していきます。
ウォーキングなどをしてお腹を刺激していきましょう。
うつ伏せになる事でお腹を刺激することも有効です。
1日30分はウォーキングしましょう。
薬
便秘の治療として最も効果が高いのは薬です。
しかし、薬の成分によっては常用することで効果が出にくくなるものもあるので、注意が必要です。
そのため、市販薬よりもしっかりと病院で相談して治療するのがおすすめです。
ここではいくつか薬について紹介します。
- 酸化マグネシウム
最近は市販薬でも売られています。便秘薬のベースとして使われることが多いです。
便をやわらかくして、自然とお腹を動かしてくれます。
軽い便秘の人はこれだけで改善します。重たい便秘の人はこの薬をベースに様々な薬を追加していく方法などもあります。
腎臓が悪い人には使いづらいので、病院で相談しましょう。
- リナクロチド
こちらも便秘薬のベースとして使いやすい薬です。下剤でお腹が痛くなりやすい人、便が固い人に有効です。通常2錠飲むのが普通ですが、やわらかくなりすぎる人には1錠で内服するのがいいでしょう。
- マクロゴール4000・塩化ナトリウム
モビコールとよばれる薬です。この薬も便秘薬のベースとして使いやすい薬です。子供や高齢者にも使えます。マイルドに効果でるので、まずは優しい薬を希望する患者様に使いやすいです。形状は粉になるので、粒が苦手なかたにもおすすめです。
他にも、便秘薬はたくさんあります。今回は一部を紹介しました。
また別の機会で便秘薬について詳しく解説したいと思います。
最後に
便秘は日常的によくある症状です。
しかし、便秘のせいと思ったら全然違う場合があります。
また、便秘だとしてもそのせいで生活の質が低下します。
医師と相談して、しっかりコントロールしていきましょう。
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